基調講演 演者

秋山 美紀

所属

慶應義塾大学

  • 環境情報学部 教授
  • 医学部 兼担教授
  • 先端生命研究所兼担教授

プロフィール

略歴

専門は、コミュニティの健康・医療・福祉とコミュニケーション。

山形県鶴岡市では市民のための健康情報ステーション「からだ館」を2007年より運営。

博士(医学),博士(政策・メディア)ともに慶應義塾大学。

厚生労働省中央社会保険医療協議会公益委員,医道審議会委員等を務める。

主な著書

「ヒューマンサービスとコミュニティ」(2022,勁草書房)

「コミュニティヘルスのある社会へ-「つながり」が生み出す「いのち」の輪」(2013, 岩波書店)

「地域医療を守れ」(2008, 岩波書店)

「地域医療におけるコミュニケーションと情報技術」(2008, 慶應義塾大学出版会)等。

演題

支え合うコミュニティをどう創るのか ~鶴岡のがんサバイバーからの示唆~

基調講演抄録

生きやすい地域を考える上では,「コミュニティ」という古くて新しい概念がカギになる。近年は「共生社会」の理念のもと,高齢者や障がい者を地域で支えるしくみづくりが各地で始まっているが,当然ながら,伝統的な家族制度に戻ることも,旧来の近隣関係に期待することもできない。課題解決のために,どのようなコミュニティを創るのかが問われている。

講演では、山形県鶴岡市の公共図書館を拠点に、筆者らが取り組んできた「からだ館」の活動を紹介し,地域の課題解決に資するコミュニティづくりへの示唆を述べる。「からだ館」は,地域住民,中でもがんサバイバーとともに15年以上にわたり,学びの場づくりやピアサポート等の活動を行ってきた。がんサバイバーは、再発の不安や生活の立て直しといった課題を持つ一方で、適切な情報や人的ネットワークを得ることができれば、本人自身がセルフケアや問題解決の力を高めていける。自分の経験を誰かの役に立てたいという思いが強く、ピアサポート活動に関わる者も多い。そこで居場所と役割を得ることで自己効力感が向上したり,共通の困難を抱えた参加者の体験に基づく体験的知識の交流といった効果もある。鶴岡地域のがんサバイバーたちは今、病院の入院患者の傾聴ボランティアとなったり、地域のピアサポーターの養成者としても活躍するようになっている。地域のケア資源を補完する,新しいヒューマンサービスの担い手になりうると考えている。 人生というライフコースにおいて,私たちは折に触れて,様々な困難に直面する。一見まったく異なる分野の課題のように見えていたことも,自分が当事者になってみると,すべてがつながっていることに気づく。たとえば深刻な病気に罹った時,治療をしながらも,仕事,子育て,介護など,自分と家族の生活をなんとか継続していかなければならない。大切な意思決定をしたり,自分にあったサービスを選択するためには,十分な情報が必要なのはもちろん,悩みを相談できる場や、ホッとできる居場所も欲しい。町内会の防災活動に参加してみると,災害時の備えと、介護予防の活動が実はつながっていることに気づいたりする。こうした当事者の気づきや思いこそが,良いコミュニティを創る原動力になる。重要なことは,当事者を包摂しながら「支え合う関係」をどう構想するか,そして,課題解決のために新しいモノやコト,考え方を当事者とともに生み出していけるのかであり,それが今,必要とされるコミュニティの機能だと考えている。

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